先頭に戻る

コンサルタントコラム

杉本 博文

2021.10.11
三面等価の原則① 分配


三面等価の原則とは、
GDPを生産・支出・分配の3つの観点から見た時、
それらは常に同じ金額になるという法則のことです。


人や機械が財・サービスの生産を行います。

それの付加価値の合計額が生産面のGDPとなります。


その生産された財・サービスが生み出した価値は、
その財・サービスを生み出す要素である労働者への賃金や
固定資本の減耗分などに分配されます。

これが分配面のGDPに該当します。


さらに、分配されたお金は消費者の消費や企業による新たな資本の形成などに使われます。

これが、支出面のGDPです。


今回は、分配面のGDPについて具体的に見ていきましょう。


新たに生み出された価値の総額は
それの生産要素に分配されるという観点から見たGDPが、
分配面から見たGDPとなります。


式にすると、

分配面から見たGDP=雇用者所得+営業余剰+固定資本減耗+間接税ー補助金

と表せます。


まず、企業が生産活動で得た収入というのは誰が生み出したものでしょうか。

それは、言うまでもなく、その企業に勤めている労働者です。
ということで、労働者という生産要素に対して、賃金という形で収入が分配されます。

これが雇用者所得に該当します。


次に、営業余剰というのは、経営者や株主に対する報酬の支払いです。
価値を生み出しているのは労働者だけではなく、
労働者を束ねて会社の方向を定める経営者や、
会社運営のための資金を提供している株主がいることを忘れてはなりません。

彼らに分配される報酬が、営業余剰に当たります。


また、財の生産のために利用している生産設備の価値の減少についても考慮に入れなければなりません。
当然ではありますが、財の生産には機械などの設備が必要不可欠であり、
企業の生産活動には必ず生産設備が必要になります。
生産設備は消耗品ですので、使えば使うほど摩耗して価値が無くなっていきます。

この価値の減少分を固定資本減耗と呼び、得られた収入は固定資本減耗にも当てられます。


そして、間接税も分配面のGDPとして計上されます。
直接税である所得税や法人税は、雇用者所得や営業余剰に含まれているとされています。

間接税には、消費税、酒税、たばこ税、関税などがあります。


一方、政府からの補助金は分配面のGDPから差し引かれます。
政府からの補助金というのは、言わば企業にとっての収入となります。
分配面のGDPは企業の収入がどのように分配されるかを表しており、
企業から出ていくお金を足し合わせているので、
入ってくるお金である補助金はマイナスであると考えれば良いと思います。


分配面から見たGDPだけで、雇用者所得の増加を考えると、
営業余剰の減少、固定資本減耗の減少、間接税の減少、補助金の増加につながります。

政府が直接コントロールできるのは、間接税の減少と補助金の増加です。
それ以外は、パイの奪い合いになってしまいますね。

そこで、生産面のGDPを考える必要があります。

岸田総理の所信表明に合った「成長と分配」です。

【前ページに戻る】